2010年1月2日(土)
4年ぶりに雪の新年を迎えました。今回貸してもらったのは、通称「ゲンコツ」と呼ばれる古いナショナル(現パナソニック)製です。
詳しいWebサイトによれば、原型の旧型番8PW1が発売されたのが1954年11月、生産販売の終了が1984年とされています。30年間も製造されたようです。
ゲンコツといってもいくつかのバージョンがあるようです。
EAS-20PW56(7,800円)やEAS-20PW09(3,900円)など、本来はアルニコマグネットですがナショナルの自社システム用にフェライトマグネットを使用した廉価版(20PW49)もあるということで、今回の画像のものはこの20PW49Sです。
真ん中の突起物は音を拡散させるディフューザー(イコライザーと記述しているものもある)です。
主に高域の補正用だそうで、当然ながらコーンとは切り離されていて一緒に動きません。
この形がゲンコツといわれる所以です。私は、B&W CDM1SEの突起物を思い出します。中央のクリーム色の部分はサブコーンになっています。
口径20cmのダブルコーンユニットで、定格入力3W、インピーダンス8Ω、Fo=50Hz、再生周波数帯域 50~15,000Hzとなっていて、本来のゲンコツよりかなり狭帯域です。
市場ではなかなか評判がよく、興味のあるユニットでしたが・・・。
早速いつものようにセットしました。第1印象はとても柔らかな音です。音圧は高くないようで、パイオニアPE-20のような音量はありません。
単体で聴くのももどかしくすぐに箱に入れてみました。これもいつもの3LZ箱です。
ビル・エヴァンストリオのLPレコード「モントルー・ジャズ・フェスティバルのビル・エヴァンス」をかけてみました。
ピアノの音がとても甘く聞こえます。ベースもよく出ています。
やはり柔らかで素直な音色です。PE-20の音より柔らかく感じます。音圧はそれほど高くなく、PE-20のような音が前へ出てくるものではありません。
低音も割と出ています。音量を上げるとバランスが崩れるのは早めです。
大きな音で鳴らすユニットではありません。ヨーロッパ系の音かというと違うような気もします。
以前持っていたBOSE 201VMにも似た柔らかさかもしれません。
もともとナショナルのアンサンブルステレオやセパレートステレオは、うるさくない大人しい音でしたから、その延長線にあると思われます。
形状を見ても手軽なオーディオ向けという感じがします。アルニコでも基本的な音の傾向は変わらないでしょう。
私が1970年代に直して楽しんだ真空管式アンサンブルステレオのような懐かしい感じがしました。
ムターのヴァイオリン協奏曲集CDをかけると、CDではありますがタンノイでは分かるヴァイオリンの空気感がゲンコツでは分かりません。
オーディオ的にはPE-20の方はサブシステムになり得ると思いますが、こちらは質のよいBGM用という感じでしょうか。
音自体は悪くなく、私はドイツ・イソフォンよりもいいと思いますが、システムに組み込むにはやや役者不足かも。
PS 2010年1月8日(金)
ちょっと訂正をしておかなければなりません。デュ・プレのLP「ハイドン ポッケリーニ/チェロ協奏曲」とビル・エヴァンスの1982年のLP「ビル・エヴァンスの肖像」を聴いてみました。
クラシックの方はともかく、ジャズの方はなかなかいいものがあります。PE-20を好青年に例えるなら、ゲンコツは酸いも甘いもかみ分けた不良中年とでもいう味があります。
帯域が狭い割に低音はよく出ているのでこんな感じがするのでしょうか。ジャズに限ってはこのユニットを持っていてもおもしろいかもと思いました。
PS 2010年5月19日(水)
何かと便利だった3LZ箱ですが、部屋の狭さはどうしようもなく、とうとう新しいオーナーの元へ引き取られていきました。